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サイドレターとは?ファンドにおけるLPとの個別合意の実務 

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サイドレターとは?ファンドにおけるLPとの個別合意の実務 

サイドレターとは何か

サイドレターとは、ファンドの運用者(GP)と特定の投資家(LP)との間で個別に締結される合意書です。全LPに共通して適用される基本契約であるLPA(リミテッド・パートナーシップ契約)の規定を、そのLPについてのみ補足・修正する役割を持ちます。

LPAそのものを個々の事情に合わせて書き換えると、他の全投資家との再交渉が必要になってしまいます。そこで実務上は「LPA=全員共通の土台」「サイドレター=個別対応」という二層構造がとられています。

サイドレターには通常、LPAと矛盾する場合はサイドレターを優先するという条項が置かれます。ただしこの優先効力はあくまで当事者間の相対的なものです。他のLPの権利を侵害したり、GPが負う受託者責任に違反したりする内容は、サイドレターをもってしても有効にはなりません。

なぜLPごとに個別合意が必要なのか

•  アンカーLPの獲得:ファンド最初期の大口出資者には、管理報酬の割引やキャリー(成功報酬)の減免が提供されることがあります。

•  公的年金・政府系投資家への対応:設立根拠法や内部規則への適合が出資の前提条件となるため、情報開示手続きや主権免除の確認などが必要になります。

•  クロスボーダー投資家への対応:投資家の所在国の税務・年金制度に関するルールへの適合を確認します。

•  ESG・倫理方針への対応:特定の業種を投資対象から除外することなどが求められる場合があります。

代表的な条項

条項

内容

MFN(最恵待遇)条項

他のLPに供与されたより有利な条件を、自らも選択して適用できる権利

手数料減免

管理報酬の割引、キャリー料率の引き下げなど

共同投資権

ファンド本体とは別に、個別案件へ追加出資できる権利

除外事由(Excuse Right)

特定の投資案件への出資義務を免除される権利

譲渡・流動性条件

持分譲渡に関するGPの同意要件を緩和する条件

なかでもMFN条項は、実務上とくに議論になりやすい条項の一つです。GPが新たなLPとサイドレターを締結すると、一定期間内にMNF権を持つ他のLPへ条件を開示・通知し、通知を受けたLPは適用したい条件を選択できます。GPは他のLPへの秘密保持義務とMFN保有者への開示義務の両方を満たす必要があるため、相手方の特定情報を伏せた上で権利内容のみを伝えるといった工夫が実務上とられています。

実務上の注意点

•  公平性のバランス:特定のLPだけを有利にする内容は他のLPとの公平性を損ない、GPの受託者責任の観点から問題になり得ます。

•  管理負担の増大:サイドレターの数が増えるほど、GP側で個別義務を漏れなく履行し続ける負担が大きくなります。

•  日本国内特有の留意点:日本のVC/PEファンドの多くは、金融商品取引法第63条の「適格機関投資家等特例業務」の届出により運営されています。特例業務届出者にも金融商品取引法第63条第11項により金融商品取引法第39条が準用され、評価損の補填を約束するような条項をサイドレターに盛り込むことはできません。

•  統計データの乏しさ:投資信託協会・日本投資顧問業協会の統計データや経済産業省のLPS関連資料を確認した限り、日本国内で「1ファンドあたり平均何通のサイドレターを抱えているか」を示す公表統計は見当たりません。サイドレターがLP・GP間の非公開契約であることも一因と考えられます。

まとめ

サイドレターは、LPA本体を書き換えずに個々の投資家の事情を吸収するための、実務上合理的な仕組みです。一方でその内容次第では、他の投資家との公平性やGPの受託者責任に関わる問題を引き起こしかねません。サイドレターを「特別扱いのための書面」ではなく「ファンド全体の設計思想を守りながら個別対応する仕組み」として体系的に捉えることが、実務上ますます重要になっています。

LP側であればMFN条項の適用条件を締結時に確認しておくこと、GP側であれば日本の適格機関投資家等特例業務のもとで損失補填に該当する条項を含めていないか契約前にチェックすることが、具体的な一歩になるでしょう。

免責事項

●  本記事は、2026年9月時点で確認できる法令・公表資料にもとづく一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法律・税務・会計上の助言を構成するものではありません。個別案件への適用については、弁護士・公認会計士・税理士その他の専門家にご確認ください。

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