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投資事業有限責任組合(LPS)とは?設立から運営・会計実務まで ~LPS法と実務の勘所を、設立から決算・税務まで整理する~

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投資事業有限責任組合(LPS)とは?設立から運営・会計実務まで ~LPS法と実務の勘所を、設立から決算・税務まで整理する~

投資事業有限責任組合(LPS)とは、投資事業有限責任組合契約に関する法律にもとづき、無限責任組合員(GP)と有限責任組合員(LP)で構成される、事業者への投資を目的とした組合です。国内のVC・PEファンドで広く使われています。

そのLPSには法人格がありません。経済産業省の「LPS法の解説」(令和7年7月2日版)も、LPSは「法人格を持たない組合にすぎないから、法律行為の主体にならない」と述べています。組合財産は組合員の共有で、通常はGPが組合員全員を代理して法律行為を行います。LPの有限責任は、この器に当然に備わったものではなくLPS法第9条2項が明文で定めるもので、そのうえで同法は、名称の使用許諾(第5条4項)、業務執行権限を有すると誤認させる行為(第9条3項)、純資産額を超える分配の受領(第10条2項)など一定の場面で責任が拡張されることも定めています。有限責任が原則で、法律が個別に例外を置いている構造です。

1.LPSとは何か

LPSの最大の特徴は、責任の異なる2種類の組合員で構成される点です。

  • 無限責任組合員(GP):組合の業務を決定し、執行します。組合の債務について無限責任を負います(GPが複数の場合は連帯責任)。
  • 有限責任組合員(LP):主に出資者として参加します。原則として、出資の価額を限度に組合の債務を弁済する責任を負います。

民法上の組合(任意組合)では出資者も組合債務について責任を負うため、投資目的の出資者には負担が重くなります。同解説も、LPの有限責任を定める第9条2項を含む第9条を「LPS法の要ともいえる重要な条文である」と位置づけています。

項目

民法上の任意組合

投資事業有限責任組合(LPS)

出資者の責任

組合債権者は損失分担の割合等に応じて各組合員に請求できる

LPは原則として出資の価額を限度

業務執行

原則は組合員の過半数で決定し各組合員が執行。契約により業務執行者へ委任も可

GPが決定・執行

事業の範囲

原則として契約で設定

LPS法第3条1項が定める範囲

登記

LPSのような法定の組合登記制度なし

必要

財務諸表等

LPS法第8条のような法定の作成・備置・意見書取得の制度なし(業務執行者の報告義務は民法671条・645条)

作成・備置と会計士等の意見書が必要


2.LPSが投資できる事業は法律で決まっている

LPSが営むことのできる事業は、LPS法第3条1項が第1号から第12号まで列挙しています。株式・持分、指定有価証券、事業者への金銭債権や貸付け、匿名組合出資、工業所有権・著作権、投資先への経営・技術指導、他のファンドへの出資などが対象で、第6号の2では事業者のために発行される一定の暗号資産の取得・保有も認められています。

注意したいのは、列挙にない行為の扱いです。LPS法第7条4項は、第3条1項に掲げる事業以外の行為が行われた場合、組合員はこれを追認することができないと定めています。もっとも、この追認禁止は無制限に広いものではありません。同解説は、第3条1項各号が列挙外の行為を「積極的に禁止又は制限する趣旨まで含むものではない」とし、第7条4項の「行為」も、専ら投資家への配当の引き当てになるような収益の獲得に向けられた法律行為に限られるとしています(事業範囲を超えたにとどまる無権代理行為の追認までが封じられるわけではありません)。また、各号列挙事業を補完し、または一体不可分と捉えられる業務は「一体業務」として同項の対象外とされ、株式取得後の議決権行使などが例示されています。

外国法人の株式・持分等への投資も認められていますが(第11号)、原則として、取得価額の合計額を総組合員の出資の総額の50%未満に収める必要があります(施行令第4条)。ただし、産業競争力強化法にもとづく外部経営資源活用促進投資事業計画の認定を受け、個別の投資について経済産業大臣の確認を受けた場合には、第3条1項各号とは別枠の事業として行うことができ、この50%の計算からも外れます(同法第17条の2)。

2024年の産業競争力強化法等の改正(2024年9月2日施行)では、本邦法人または本邦人がその経営を実質的に支配し、または経営に重要な影響を及ぼす一定の外国法人が、この枠の「外国法人」から除かれました(第2条1項、施行令第1条)。投資先がどちらに当たるかは政令・省令まで確認が必要です。なお同じ改正で、投資対象に合同会社の持分の取得等を明記する見直しも行われました。

3.LPSの設立実務

設立手続と金商法対応は、順番に片付ける関係ではありません。名称は組合契約書の必要的記載事項ですし、LPへの勧誘を始める前に、第二種金融商品取引業の登録や適格機関投資家等特例業務の届出が必要かを確認し、必要な場合には登録を受け、または届出を行ったうえで勧誘を開始する必要があります。スキーム設計と投資家の属性確認、金商法上の対応を先に固め、そのうえで組合契約の効力発生、2週間以内の登記、という流れです。

LPSは組合契約が効力を生じることで成立し、登記は成立要件ではありません。ただし登記すべき事項は登記の後でなければ善意の第三者に対抗できないため(第4条)、2週間以内の登記(第17条)が実務の起点になります。

組合契約書は各組合員が署名または記名押印し、記載事項は①事業 ②名称 ③事務所の所在地 ④組合員の氏名または名称・住所とGP/LPの別 ⑤出資一口の金額 ⑥効力発生年月日 ⑦存続期間の7つです(第3条3項)。出資一口の金額は均一でなければならないため(第6条3項)、組合員ごとの出資額の差は口数で表現します。存続期間の満了は法定の解散事由なので(第13条3号)、回収・清算まで見据えた期間設計が必要です。

名称には「投資事業有限責任組合」の文字を用いる必要があり(第5条1項)、LPが自己の氏名・名称をLPSの名称に使うことを許諾すると、その使用以後に生じた組合債務についてGPと同一の責任を負います(第5条4項)。登記事項の変更も2週間以内(第18条)で、登記を怠った場合や財務諸表等の備置義務に違反した場合は100万円以下の過料の対象です(第34条)。

4.金融商品取引法上の対応

LPS契約に基づく権利(ファンド持分)は金商法上の「みなし有価証券」に当たり、規制の対象になるのはLPSそのものではなく募集や運用を行うGP等です。GPが持分の募集または私募を自ら行い(自己募集)、出資された財産を主として有価証券等に投資して運用する(自己運用)場合、原則として自己募集には第二種金融商品取引業、自己運用には投資運用業の登録が問題になります。

もっとも、出資者に適格機関投資家が1名以上含まれ、適格機関投資家以外の一定の者が49名以下であることなど、出資者要件その他の法定要件を満たす場合には、適格機関投資家等特例業務として、登録に代えて届出により行える場合があります。適格機関投資家以外の出資者にも金商法施行令が定める属性要件があるため、「49名以下なら誰でもよい」制度ではありません。

5.運営フェーズ:GPとLPの責任分界

組合の業務はGPが決定し、執行します(第7条1項。GPが複数いる場合は原則として過半数で決定)。LP側で重要なのが有限責任の例外で、LPS法第9条3項は、LPに業務執行権限を有する組合員であると誤認させるような行為があった場合、その誤認に基づいて組合と取引をした者に対し、当該LPがGPと同一の責任を負うと定めています。誤認させる行為があり、かつ取引相手が実際にその誤認に基づいて取引したという関係が前提です。

では、LPのどこまでの関与が「組合の業務」に当たるのか。同解説は、①LPS法上のLPの地位に基づく行為(解散請求権や閲覧権・検査権の行使など)、②LPS契約上のLPの地位に基づく行為のうち円滑な運営の観点から許容されるもの、③組合員の地位と関係なく行う行為(GPからの相談・助言、会計や事業の調査、組合債務の保証など)は、いずれも基本的に該当しないと整理しています。

設計上とくに効いてくるのが②です。利益相反取引の承認、LPクローバック義務の履行、組合員集会の議決権行使による重要事項(解散、組合資産の譲渡、債務負担、事業内容の変更、GPの解任など)の承認・不承認に加え、諮問委員会においてGPの提案事項に対して助言をし、同意し、またはその拒否をすることが明示的に例示されています。

一方、同解説の脚注は、すべての投資先の決定についてLPの同意を必要とする条項を定めてLPが権利行使することは、GPの業務執行と質的に異ならず第7条1項に抵触するとしています。したがって、監督を目的とする関与と個別投資の意思決定そのものへの関与は、区別して設計する必要があります。なお、第7条1項の業務執行の問題と第9条3項によるLPの責任拡張の問題は別の論点で、前者に触れたからといって直ちに無限責任になるわけではありません。

第9条2項の「出資の価額」について、同解説は、民法第674条1項および第688条3項と同義であり「単に出資することを約束した金額ではなく、実際に出資された金額を指す」としています。キャピタルコール方式でいえば、まだコールされていないコミットメント額は「出資の価額」に含まれません。もっとも、適法なキャピタルコールによって具体的に発生した出資義務は、LPS契約上の債務として別途履行が問題になります。同解説は、LPクローバックの履行請求についても、一般論として同項に抵触しないと整理しています。

6.会計・決算実務

会計実務の中心はLPS法第8条です。GPには、毎事業年度経過後3か月以内に貸借対照表・損益計算書・業務報告書とこれらの附属明細書を作成し、組合契約書および公認会計士または監査法人の意見書とあわせて5年間主たる事務所に備え置く義務があります。この意見書の対象は、条文上、貸借対照表・損益計算書およびこれらの附属明細書に限られ、業務報告書は含まれません(第8条2項括弧書き。令和6年改正で整理)。組合員だけでなく組合の債権者も、営業時間内であればこれらの閲覧・謄写を請求できます(第8条3項)。

投資の評価も特徴的です。LPS法施行規則第11条は、投資に原則として時価を付すことを求めつつ(2項)、投資に係る資産は組合契約に定めるところにより評価しなければならないとしています(4項)。評価方法は組合契約で定める必要があり、その内容が毎期の評価実務の基礎になりますが、契約に書けば何でも通るわけではなく、原則時価評価その他の会計ルールとの整合が必要です。

会計処理と監査の拠りどころは、日本公認会計士協会の業種別委員会実務指針第38号「投資事業有限責任組合における会計上及び監査上の取扱い」です。同指針は2025年2月25日公布の改正施行規則に対応して改正され、原則として2025年4月1日以後開始する事業年度または会計期間に係る監査から適用されています(早期適用可)。

7.分配には上限がある

決算でできあがった数字は、そのまま分配の上限に効いてきます。組合財産は、貸借対照表上の純資産額を超えて分配することができません(第10条1項)。違反して分配を受けたLPは、その金額の範囲内で組合債務を弁済する責任を負います(同条2項)。ただし分配を受けた時から5年を経過したときは、この限りではありません。

実務で注意したいのが分配可能額の計算です。施行規則第22条1項は、分配の対象となる純資産額から未実現利益を除くと定めています。未実現利益の過大計上による不当な分配を防ぐ趣旨です。あわせて同条2項は未実現利益の額を、同条3項は株式等を現物で分配する場合の会計処理の方法を、それぞれ注記することを求めています。

8.税務:損益は組合員に直接帰属する

以下は、主として法人がLPとなる場合を前提とします。LPSでは、組合事業から生じた損益は原則として各組合員に直接帰属し、組合段階では法人税を課さない取扱いが採られます。法人税基本通達14-1-1も、民法上の組合やLPSを「任意組合等」として、利益・損失が各組合員に直接帰属することを明らかにしています。いわゆる構成員課税(パススルー課税)です。

法人組合員が損益を取り込む方法として、通達14-1-2は3つの方式を示しています。

方式

内容

(1) 総額方式

収入金額、支出金額、資産、負債等を分配割合に応じて取り込む

(2) 中間方式

収入金額と、それに係る原価・費用・損失の額を分配割合に応じて取り込む

(3) 純額方式

計算された利益または損失の額を分配割合に応じて分配・負担する


3方式は同列ではありません。通達は(1)を原則とし、(2)(3)は継続適用かつ課税上の弊害がない限り認めるという構造です。中間方式では受取配当等の益金不算入や所得税額控除等は適用されるが引当金・準備金等は適用されず、純額方式ではいずれも適用されません。

取り込む時期も重要です。通達14-1-1の2は、現実に分配を受けていなくても帰属損益額をその事業年度の益金・損金に算入するとしつつ、組合事業の損益を毎年1回以上一定の時期に計算し、個々の損益の帰属が発生後1年以内であれば、組合事業の計算期間を基とすることを認めています。組合の決算スケジュールが、そのまま法人LPの申告スケジュールに効いてきます。

また、LPSの財務諸表は投資を時価評価しますが、税務上の金額は法人税法のルールで決まるため両者は一致しません。取得価額や実現損益、源泉税など申告に必要な情報まで整理して提供できると、LP側の決算がスムーズに進みます。

9.まとめ

LPSは、LPの責任を原則として出資の価額の範囲に限定しながら、組合段階で法人課税を受けずに投資事業を行えるファンド・ヴィークルです。一方で、事業範囲の確認、責任分界の維持、投資評価、財務諸表等の作成と意見書の取得、分配可能額の判定といった実務が、存続期間を通じて毎期発生します。

しかもこれらは独立していません。組成時に定めた投資対象や評価方法が数年後の決算と監査に影響し、その決算の数字が分配可能額を決め、そこで整理した情報が法人LPの申告につながります。まずは手元の組合契約書を開き、事業範囲と評価方法の条項が実務に耐える内容かを確認してみてください。

免責事項

  • 本記事は、2026年8月時点で確認できる法令・公表資料にもとづく一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法律・税務・会計上の助言を構成するものではありません。個別案件への適用については、弁護士・公認会計士・税理士その他の専門家にご確認ください。
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