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LP出資とは? 出資後に事業会社で発生する実務の全体像

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LP出資とは? 出資後に事業会社で発生する実務の全体像

LPS(投資事業有限責任組合)との契約に押印して、ひと段落。そう思っていると、数か月後に「キャピタルコール通知書」が届き、組合の決算後には決算書の一式も届きます。

いつまでに・いくらを・どの勘定で処理すればよいのか。初めてLP出資を担当すると、社内に答えられる人がいないこともあります。

さらに、分配を1円も受け取っていない期でも、税務上は所得が生じることがあります。LP出資は「払い込んで終わり」ではありません。本記事では、LPSが終了するまで続く事業会社側の実務を9つのステップで整理します。

LP出資とは:GP・LP・LPSの関係

LP出資とは、ベンチャーキャピタルファンドなどに有限責任組合員(LP)として出資することです。国内のファンドの多くは、投資事業有限責任組合契約に関する法律(LPS法)にもとづくLPSです。制度の全体像は「投資事業有限責任組合(LPS)とは?設立から運営・会計実務まで」にまとめています。

立場

役割

責任の範囲

GP(無限責任組合員)

ファンドの運営、投資判断、組合の決算

組合の債務に無限責任

LP(有限責任組合員)

出資し、分配を受ける。業務執行には関与しない

出資の価額が上限(LPS法9条2項)

ただし、業務を執行する組合員だと誤認させる行為をすると、誤認して取引した相手にGPと同じ責任を負うことがあります(LPS法9条3項)。

出資からLPS終了までの9ステップ

全体像は次のとおりです(担当は目安です)。

#

ステップ

経理・財務がすること

主な担当

1

出資検討・決定

資金計画・予算の準備

CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)・経営企画、財務

2

LPA等の確認・締結

会計・税務に関わる条項の確認

法務、経理

3

出資約束金額の管理

ファンド別台帳の作成

財務、経理

4

キャピタルコール対応

通知書の確認、決裁、送金

財務

5

出資時の会計処理

仕訳、会計方針の決定

経理

6

LPSからの資料の確認

決算書・税務資料の受領と確認

経理、CVC

7

自社の決算整理

損益・評価の取り込み

経理

8

税務申告への反映

申告調整

経理、税理士

9

分配・回収・終了

分配の処理、台帳の締め

財務、経理

ステップ1:出資検討・決定 ― 担当と資金計画を先に決める

検討の段階で、GPとの窓口(CVC・経営企画)、送金(財務)、会計・税務(経理)、契約(法務)の役割分担を決めておくと、出資後の実務が滞りにくくなります。

キャピタルコールの時期と金額はGPの判断によるため、GPから資金拠出の見通しを受け取り、資金繰り計画に反映しておきましょう。

ステップ2:LPA等の契約書類の確認・締結 ― 会計・税務の前提はここで決まる

LPA(組合契約)は法務が中心に確認しますが、会計・税務・資金繰りの前提もその条項で決まります。経済産業省の「投資事業有限責任組合契約書例及びその解説(令和7年版)」(2025年6月23日公表)も参考になります。少なくとも次の条項を確認しましょう。

また、全組合員に共通のLPAとは別に、GPと特定のLPが個別の合意(サイドレター)を結ぶことがあります。自社が結ぶ場合は、その内容も確認します(参考:「サイドレターとは?ファンドにおけるLPとの個別合意の実務」)。

ステップ3:出資約束金額の管理 ― ファンド別台帳をつくる

LP出資では契約時に出資約束金額(コミットメント)を決め、GPから請求を受けるたびに払い込む「キャピタルコール方式」が一般的です。約束額・払込済額・未払込残高は、LPSごとの台帳で管理しましょう。以下は項目の例です(数値は仮です)。

項目

例

出資約束金額

100,000,000円

払込済額(累計)

30,000,000円

未払込残高

70,000,000円

分配受領額(累計)

0円

帳簿価額(持分相当額)

決算の取り込み後の金額

未払込残高は負債に計上しないのが一般的ですが、請求があれば払い込む将来の支払義務です。資金繰り計画に組み込み、開示の要否も必要に応じて検討します。

ステップ4:キャピタルコールへの対応・送金 ― 期日を落とさない

キャピタルコール通知書には一般的に、ファンド名・コール番号、払込額・払込期日・振込先口座、累計払込額・残りの出資約束金額、資金使途(投資先への投資か、管理報酬・運営費用か)が記載されています。届いたら、台帳と照合して残りの約束金額と矛盾がないかを確認します。各項目の読み方と払込時の会計処理は、「キャピタルコールとは?仕組み・通知書・会計処理を実務目線で解説」が参考になります。

払込期限は通知から2週間程度とされることが多いものの、日数はLPAで定められるため必ず確認します。遅れると遅延利息が課され、さらに遅れると払込義務の不履行(デフォルト)として扱われ、持分を失うおそれもあります(LPAの定めによります)。社内決裁の日数を見込んだ送金フローを決めておきましょう。

通知の宛先に経理・財務の共有アドレスを登録しておくと、見落としを防げます。外貨建てなら為替や送金手数料の負担も確認します。

ステップ5:出資時の会計処理 ― 払込を「投資有価証券」として計上する

LPSへの出資は金融商品取引法上の有価証券に該当する場合があり、その場合は一般的に「投資有価証券」などで計上します。払込時の仕訳の例は次のとおりです。

(借方)投資有価証券(投資事業有限責任組合出資金) ××× /(貸方)現金預金 ×××

なお、ステップ7で解説する投資先株式の時価評価は、適用するかどうかを出資時に決める必要があります。これから出資する場合は、出資前に方針を決めておきましょう。

ステップ6:LPSから届く資料の確認 ― 何が監査済みかを知る

主な資料は次のとおりです。

資料

時期の目安

確認ポイント

決算書一式(貸借対照表・損益計算書・業務報告書・附属明細書)

GPが事業年度経過後3か月以内に作成(LPS法8条)

監査意見、自社の持分相当額

運用報告書(四半期報告など)

LPAの定めによる

投資先の状況、評価額の変動

税務申告用の明細(持分ごとの損益、源泉税額など)

GPとの取り決めによる

申告に必要な内訳の有無

運用報告書では、IRR・DPI・TVPIなどの指標で運用状況が示されることがあります。各指標の定義は「VCの投資評価指標:IRR・DPI・RVPI・TVPIを解説」で確認できます。

GPは決算書一式を5年間備え置き、公認会計士または監査法人の意見書もあわせて備え置く義務があり、組合員は閲覧・謄写を請求できます(LPS法8条)。2024年の法改正(2024年9月2日施行)で、監査意見の対象は貸借対照表・損益計算書とその附属明細書に限られ、業務報告書は対象外になりました(この改正に対応した業種別委員会実務指針第38号は、2024年9月2日以後に開始する事業年度に係る監査から適用)。

そのため、業務報告書の投資先の状況や評価の考え方にも、自社で目を通しておくとよいでしょう。

税務面では、GPは「組合員所得に関する計算書」を、計算期間が終了した日の属する年の翌年1月31日と、計算期間終了日の翌日から2か月を経過する日の、いずれか遅い日までに税務署へ提出します(所得税法227条の2・同法施行令)。

ステップ7:自社の決算整理・会計処理 ― 3つの取り込み方、時価評価、決算期ずれ

LPSの決算書が届いたら、組合の損益のうち自社の持分を、自社の決算に取り込みます。取り込み方は次の3つです(金融商品会計に関する実務指針132項・308項)。

方法

考え方

貸借対照表(BS)

損益計算書(PL)

純額法(原則)

BS・PLの双方について、持分相当額を純額で取り込む

投資有価証券(出資金)の1科目

組合損益の1科目

中間法(BSは純額法、PLは総額法)

BSは持分相当額を純額で、PLは損益項目ごとの持分相当額を取り込む

投資有価証券(出資金)の1科目

組合の損益項目ごと

総額法

組合財産のうち持分割合に相当する部分を自社の資産・負債としてBSに計上し、PLも同様に処理する

組合の資産・負債の項目ごと

組合の損益項目ごと

会計上は、純額法が原則です。組合財産の持分相当額を投資有価証券(出資金)として計上し、組合の純損益の持分相当額を当期の損益に計上します。出資者が単なる資金運用と考えている場合や、有限責任の特約が付いている場合など、多くの場合はBS・PLの双方を純額で取り込む方法が適切と考えられるためで、LPSへの出資はこれに当てはまる場合が多いとされています。ただし、最終的には契約内容の実態と経営者の意図を考慮して、経済実態を適切に反映する方法を選択することになります。

なお、税務(法人税基本通達)にも同じような3つの方法があり、「総額方法・中間方法・純額方法」と呼びます。税務では総額方法が原則で、詳しくはステップ8で扱います。会計は純額法で取り込み、税務申告ではLPSから届く税務関係の資料をもとに総額方法を前提とした調整を行う、という組み合わせが一般的です。

設例:3つの方法で仕訳はどう変わるか

ここでは、自社がLPSに10%出資している場合を考えます(例。数値や科目名は説明のためのもので、消費税・源泉所得税は省略しています)。

LPS全体の当期の損益と、期末の出資金合計は次のとおりです。

LPSの決算書

金額

投資収益(株式の売却収入など)

6,000

投資原価(売却した株式の取得原価など)

▲2,000

その他収益(受取利息など)

50

その他費用(管理報酬など)

▲1,050

当期利益

3,000

資産(株式90,000、現金及び預金8,000、その他資産2,000)

100,000

負債

▲1,000

出資金合計

99,000

出資金合計99,000は、受入出資金100,000+繰越累計利益1,000−分配金累計額5,000+当期利益3,000の合計です。

自社の帳簿では、取り込み前の投資有価証券(出資金)の残高が9,600あるとします。

  • 払込(キャピタルコール):10,000(LPSの受入出資金100,000×10%)
  • 前期までの取り込み:100(LPSの繰越累計利益1,000×10%)
  • 分配:▲500(LPSの分配金累計額5,000×10%)

払込と分配は、期中にその都度、投資有価証券で処理しているものとします。この状態から、当期の決算を取り込みます。

① 純額法(すべてを1つの科目に集約)

(借方)投資有価証券 300 /(貸方)組合損益 300

② 中間法(PLは項目ごと×10%、BSは投資有価証券に集約)

借方

金額

貸方

金額

投資原価

200

投資収益

600

その他費用

105

その他収益

5

投資有価証券

300

計

605

計

605

③ 総額法(BS・PLの全項目×10%)

借方

金額

貸方

金額

株式

9,000

負債

100

現金及び預金

800

投資収益

600

その他資産

200

その他収益

5

投資原価

200

投資有価証券

9,600

その他費用

105

計

10,305

計

10,305

総額法では、これまで積み上げてきた投資有価証券の帳簿価額9,600を、いったん組合の資産・負債の項目に振り替えます。貸方の「投資有価証券9,600」はその振替を表しています。

取り込み後の結果を比べると、次のようになります。

科目

純額法

中間法

総額法

組合の資産・負債(株式・現金及び預金など。純額)

―

―

9,900

投資有価証券(出資金)

9,900

9,900

0(振替済み)

BS上の持分相当額

9,900

9,900

9,900

PL上の利益

300(組合損益の1科目)

300(損益項目ごと)

300(損益項目ごと)

どの方法でも、会計上の持分相当額(9,900)と当期の利益(300)は同じです。違うのは、BS・PLにどこまで細かい科目で表示するかです。ただし、税務上の扱いは、会計の方法ではなく税務で選ぶ計算方法(総額方法・中間方法・純額方法)によって変わります(→ステップ8)。

純額法・中間法の場合、取り込み後の投資有価証券の残高は、LPSの出資金合計×自社の持分(99,000×10%=9,900)と一致するはずです。LPSから組合員ごとの持分を示した資料が届く場合は、その金額と照合しましょう。合わない場合は、払込・分配の計上時期のずれや、取り込み漏れがないかを確認します。

PLの科目名(「組合損益」など)は会社によって異なります。どの方法・科目で取り込むかは会計方針として決め、継続して適用しましょう。

評価差額と時価評価

組合が保有するその他有価証券の評価差額の持分相当額は、「その他有価証券評価差額金」として純資産の部に計上されます。

取り込みに関連して、企業会計基準委員会(ASBJ)が2025年3月11日に公表した改正移管指針第9号「金融商品会計に関する実務指針」も押さえておきましょう。LPSが決算で投資先の市場価格のない株式を時価評価している場合、一定の要件のもとで、LPもその株式(出資者である企業の子会社株式・関連会社株式を除く)を時価で評価し、評価差額の持分相当額を純資産の部に計上することを選択できるようになりました。

  • 要件:①組合の運営者が出資財産の運用を業としていること、②組合の決算で市場価格のない株式を時価評価していること
  • 選択のタイミング:出資時に選択し、出資後に取りやめることはできません(既存の出資は、適用初年度の期首に対象とするかを決める取扱いがあります)
  • 適用時期:2026年4月1日以後に開始する事業年度の期首から(2025年4月1日以後開始の事業年度から早期適用も可能)

なお、日本公認会計士協会は2026年8月21日、この時価評価の改正などに対応するため、LPSの会計・監査の取扱いを定める業種別委員会実務指針第38号の改正案(公開草案)を公表しています。確定後の内容にも注意が必要です。

決算期のずれと連結

迷いやすいのが決算期のずれです。たとえばLPSが12月決算で自社が3月決算の場合(例)、どの時点の組合の決算数値を取り込むかを決める必要があります。組合契約や会計方針によって扱いが分かれうるため、取り込む時点を会計方針として決め、継続して適用するのが実務的です。

決算日以降の大きな変動や、持分価値が大きく下がった場合の評価の考え方も、あわせて決めておきましょう。

LPSを連結や持分法の対象に含めるかどうかは、議決権ではなく主に業務執行の権限を基準に判断します(実務対応報告第20号)。業務執行に関与しない一般的なLP出資では問題になりにくいものの、自社や関係会社がGPの運営に関与する場合などは検討が必要です。

ステップ8:税務申告への反映 ― 分配がなくても所得が出る

LPSは法人税の納税主体にならず、損益は組合員に直接帰属します(パススルー課税)。事業会社は、組合の損益のうち自社の持分を法人税申告に取り込みます。

取り込む時期:組合の損益は、現実に分配を受けていなくても、分配割合に応じて益金・損金に算入します。ただし、年1回以上一定の時期に計算し、かつ損益の発生から1年以内に帰属する場合は、組合の計算期間の終了日が属する自社の事業年度に取り込むこととされています(法人税基本通達14-1-1の2)。

計算の方法:法人税基本通達14-1-2は3つの方法を定めています。

方法

内容

注意点

総額方法(原則)

収入・支出・資産・負債等を分配割合に応じて計算

―

中間方法

収入・原価・費用・損失を分配割合に応じて計算

引当金・準備金等の規定は適用できません

純額方法

利益または損失の額のみを分配割合に応じて計算

受取配当等の益金不算入や所得税額控除等が適用できません

中間方法と純額方法は、課税上の弊害がない限り、継続適用を条件に認められます。なお、純額方法を選んでも、組合で発生した交際費・寄附金の損金算入の制限は適用されるため、別途その金額を集計する必要があります(法人税基本通達14-1-2(注)5)。

ステップ7で触れたとおり、会計は純額法、税務は総額方法で処理する場合は、LPSから届く税務関係の資料で、受取配当・源泉所得税・交際費などの内訳を確認し、申告で調整します。会計と税務の方針をすり合わせておきましょう。

このほか、次の点にも注意します(いずれも個別の事実関係と税務判断によります)。

  • 源泉所得税:LPSから内国法人であるLPへの分配に源泉徴収は不要です。一方、組合が投資先から受け取った配当の源泉所得税は、総額方法・中間方法であれば、自社の所得税額控除の対象になります。
  • 損失の制限:「特定組合員」(重要な業務執行の決定に関与し自ら執行する組合員以外)で、責任が実質的に組合財産の範囲に限られる場合などは、「調整出資等金額」(出資額などをもとに計算)を超える組合の損失を損金に算入できません(租税特別措置法67条の12)。超えた分は翌期以降の組合利益の範囲で損金に算入します。LPSのLPは対象になりえます。
  • 消費税:組合の取引は、持分割合などに応じて各組合員が行ったものとされます(消費税法基本通達1-3-1)。管理報酬などについて、インボイス制度の下での仕入税額控除の要件もGPと確認しておきましょう。

ステップ9:分配・投資回収・LPS終了時の対応 ― 最後まで台帳で追う

投資先の売却などで回収が進むと、分配を受けます。

  • 現金分配:経済実態としては資金の移動で、それ自体は収益ではありません。純額法・中間法では、分配は投資有価証券の帳簿価額の減額として処理します(ステップ7の設例のとおり)。総額法では扱いが異なりうるため、会計方針と台帳を照合して処理します。
  • 分配時の税務:税務上は分配の有無にかかわらず組合の損益を取り込むため(ステップ8)、会計処理と差が出る場合は申告調整が必要になることがあります。
  • 現物分配:投資先の上場後、株式で分配されることがあります。自社名義の証券口座が必要で、通知後の開設では間に合わない可能性があるため、事前に準備しておきましょう。
  • 存続期間の延長:満期時に未回収の投資先が残っていると、延長の同意を求められることがあります。延長期間中の管理報酬などの負担と回収の見込みを比べて判断します。
  • 清算:最後の分配を受けて出資が終わります。台帳を締め、処理が残っていないかを確認します。終了時の損益や、措法67条の12で繰り越した損失の扱いは個別に異なるため、あわせて確認します。

まとめ:出資前に決めておきたい3つのこと

出資の前に決めておくべきことは、次の3つです。

  1. ファンド別台帳:約束額・払込額・未払込残高・分配額・帳簿価額を1本で管理します
  2. 会計と税務の方針:会計の取り込み方法、時価評価の選択の有無、税務の計算方法を決めます
  3. 担当と連絡の経路:通知や決算資料が確実に経理・財務に届く体制をつくります

出資時に台帳と方針を決め、LPSの終了まで同じ台帳で追い続けることが、決算や申告の手戻りを防ぐ近道です。

免責事項

  • 本記事は、2026年9月時点で確認できる法令・公表資料にもとづく一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法律・税務・会計上の助言を構成するものではありません。個別案件への適用については、弁護士・公認会計士・税理士その他の専門家にご確認ください。
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