ファンドオブファンズ(FoF)とは、個別の企業ではなく、他のファンドに出資するファンドのことです。VCファンドに出資するVCファンドや、複数のPEファンドに分散して出資するファンドがこれにあたります。
FoFの話になると、手数料が二重にかかる点ばかりが注目されがちです。ところが運営の現場でまず困るのは、別のところにあります。資金を払い込む日も、決算に必要な数字がそろう日も、自分では決められないことです。
なお、この記事で扱うのは、公募の投資信託ではなく、私募のVC・PEファンドに出資するFoFです。組合会計や資金管理をお預かりするファンドアドミの立場から、運営で問題になる資金繰り・報酬・評価を整理します。
1. ファンドオブファンズとは、ファンドに出資するファンド
投資事業有限責任組合(LPS)が他のファンドに出資できる根拠は、LPS法3条1項9号です。同号は、他の投資事業有限責任組合や投資事業を営む民法上の組合などへの出資を、組合の事業として認めています。経済産業省の契約書例(令和7年版)も、事業目的に「投資組合等に対する出資」を置いています。
構造は、ファンドの上にもう一段ファンドを重ねた「二階建て」です。
主体 | 立場 | 主な役割 |
|---|---|---|
FoFの有限責任組合員 | FoFに出資し、報告を受ける | |
FoF(組合)自身 | 投資先ファンドの有限責任組合員(LP) | 投資先ファンドに出資する |
FoFのGP | FoFの無限責任組合員 | FoFの業務を執行し、投資先ファンドの選定・出資・モニタリングを行う |
投資先ファンドのGP | 投資先ファンドの無限責任組合員 | 実際に企業へ投資する |
ポイントは、FoFの運営者が担う二重の役割です。FoFの運営者は、自らのLPに対してはGPとして運営責任を負い、投資先ファンドに対しては、LPであるFoFの業務を執行する立場にあります。この記事で扱う論点は、すべてここから生まれます。
2. なぜ二階建てにするのか
報酬が重なってもFoFが選ばれるのは、主に次の理由からです。
- 運用者と投資年を分散できる:一つのファンドの成果は、そのGPの目利きと投資した年の市場環境に左右されます。複数に分ければ振れ幅を抑えられます。
- 単独では入れないファンドに届く:実績のあるファンドは、既存のLPで募集枠が埋まっていることがあります。
- 選定とモニタリングを任せられる:ファンドの選定や出資後の管理を自前で抱えずに済みます。
- 最低出資額の壁を下げられる:直接出資するより小さな金額で、複数のファンドに参加できます。
国内でも、事業会社のグループや政府系の投資機関が、FoFの形でVCファンドに出資する例があります。
3. 資金繰り:コールを受けてから、コールを出す
企業に直接投資するファンドでは、GPが払込日を調整しやすく、投資案件の払込日から逆算してLPにキャピタルコールを出せます。
FoFは違います。投資先ファンドのGPがコールを出したら、FoFはそれに応じなければなりません。投資先が複数あれば、それぞれ別の日に、別の金額のコールが届きます。
通知期間は組合契約で決めるもので、契約書例も空欄にしています。機関投資家団体のILPAは、少なくとも10営業日の猶予を推奨しています。
たとえば、投資先ファンドとFoFの双方が払込期日を通知から2週間程度と定めている場合、FoFが投資先から通知を受けてから自分のLPにコールを出すと、LPからの着金を待つ間に投資先への払込期日が来てしまいます。
そのため、資金を手当てする仕組みが別に必要です。方法は、大きく二つです。
方法 | 仕組み | 留意点 |
|---|---|---|
手元資金を持つ | 先にLPへキャピタルコールを行い、払い込まれた資金を一定額保有しておく | 滞留する現金が利回りを押し下げる |
サブスクリプション・ファイナンス | LPに対するコールの権利を担保に、短期の借入れをして先に払い込む | 借入れの条件を組合契約で定めておく(契約書例15条は期間と残高の上限付きで認めている) |
どちらを選ぶにしても、組成の段階で決めておく必要があります。
4. フィー・オン・フィーをどう考えるか
FoFでは、投資先ファンドの報酬に加え、FoF自体の報酬が発生するのが一般的です。いわゆるフィー・オン・フィーで、実際の負担は各層の報酬体系や、報酬の減免・相殺の有無によって異なります。
報酬 | FoFの層(契約で設定される場合) | 投資先ファンドの層 |
|---|---|---|
管理報酬 | FoFのGPへ | 投資先ファンドのGPへ |
成功報酬 | FoFのGPへ | 投資先ファンドのGPへ |
論点は、FoFの機能が、各層を合わせた報酬の負担に見合うかどうかです。
組成する側としては、報酬の設計を最初から透明にしておくことが大切です。管理報酬を出資約束金額と投資先ファンドへの出資実行額のどちらに課すのか、成功報酬を投資先ファンドごとに計算するのかFoF全体で計算するのか。この設計で、LPの実質的な負担は大きく変わります。
FoFのGPやその関係者が運営するファンドに出資する場合は、報酬の扱いや利益相反の手続も組合契約で決めておきます。管理報酬と成功報酬の基本は「ファンドの報酬体系」で、分配の順番と成功報酬の計算は「キャリーはいつ、いくら発生するのか」で解説しています。
5. 評価と決算:投資先ファンドの報告時期に左右される
FoFが保有するのは投資先ファンドの持分なので、決算ではその持分をどう評価するかが中心になります。
LPSの財務諸表では、投資は原則として時価で評価し、その方法は組合契約で定めます(LPS法施行規則11条)。
ファンド持分の評価について、国際的な評価ガイドラインであるIPEVガイドライン(2025年12月版。2026年4月1日以後に始まる四半期から適用)は、投資先ファンドが報告した直近の純資産価額(NAV)の持分相当額を基礎にできるとしています。ただしその前提は、NAVが投資先の公正価値にもとづいて算定されていることです。NAVの基準日から評価日までの出資・分配や市場の変動など、重要な変動があれば調整が必要になります。
このため、投資先ファンドの報告時期がFoFの評価と決算の日程に直接影響します。報告が間に合わない場合には、入手できる直近のNAVと、その後の出資・分配などの情報をもとに、必要な調整と監査人への説明を検討することになります。つまり、情報をいつ取得し、評価をどう調整するかを前もって決めておく必要があります。
一方で、財務諸表等は事業年度経過後3か月以内に作成しなければならず(LPS法8条1項)、契約書例ではこの期間内に監査を終えて組合員へ送付するとしています(決算の進め方は「投資事業有限責任組合の決算実務」で解説しています)。投資先からの情報取得や必要な評価調整に加え、FoF自身の決算・監査も、この期限を踏まえて進める必要があります。
FoFに出資するLPの側にも論点があります。企業会計基準委員会(ASBJ)の移管指針第9号は2025年3月の改正で、組合等への出資について、組合等が持つ非上場株式を時価で評価することを選べるようにしました(2026年4月1日以後に始まる事業年度から適用、早期適用も可)。要件は、運営者が出資財産の運用を業としていることと、組合等の決算で市場価格のない株式を時価評価していることの2つです。
LPがFoFへの出資にこの扱いを選んだ場合、要件を満たすかどうかは、FoFが出資している投資先ファンドごとに判定します。対象となる組合等では、出資者の子会社株式・関連会社株式を除き、原則としてすべての市場価格のない株式を時価評価の基礎とします。
適用対象とする組合等の選択方針はあらかじめ定め、その方針に基づいて出資時に適用の有無を決めます。なお、適用初年度には、既存の出資について期首時点で方針に基づき適用対象を決める経過措置があります。一度適用した会計処理は出資後に取りやめられないため、FoFに出資するLPの経理担当は出資前に確認しておきたい点です。
6. FoFを組成するときに先に決めておくこと
組成の段階で固めておきたい項目です。
- 資金繰りの方式:手元資金で対応するのか、サブスクリプション・ファイナンスを使うのか。
- LPへのコールのルール:投資先への払込期日と、LPからの入金までにかかる日数を踏まえて、通知期限・払込期日・予備資金を定める。
- 報酬の算定基礎:何に対して何パーセントか。各層を合わせた負担をLPにどう説明するか。
- 投資先ファンドからの情報取得:報告の時期と様式を、出資の時点で確認する。
- 評価方針:投資先ファンドの持分をどう評価し、基準日のずれをどう扱うか。
- LPへの報告の範囲:投資先ファンドや、その先の企業の情報をどこまで開示するか。投資先ファンドとの守秘義務との関係も確認します。
7. まとめ
ファンドオブファンズの仕組みは単純ですが、運営には投資先ファンドとの資金・情報の受け渡しを調整する負荷が加わります。資金が必要になる日を自分で決められないこと、報酬が二層になりやすいこと、評価と決算が投資先ファンドの報告時期に左右されることは、いずれも二階建ての構造から生じます。
だからこそ、資金繰りの方式と情報取得の段取りは、組合契約や投資先との取り決めを変えにくくなる前の、組成の段階で決めておくことが効きます。
FoFの組成を検討しているなら、まず「投資先からコールが届いてから、自分のLPの資金が着金するまで何日かかるか」を数えてみてください。そこに無理があれば、資金繰りの設計から始める必要があります。
当社はファンドアドミニストレーションとして、キャピタルコール・分配管理・組合員向けの報告などの運営業務や、投資先の評価・組合決算書の作成などの決算業務をお預かりしています。二階建て構造のファンドの管理体制についても、お気軽にご相談ください。
主な参照資料
- 投資事業有限責任組合契約に関する法律(3条1項9号、8条1項)、同法施行規則(11条)
- 経済産業省「投資事業有限責任組合契約書例及びその解説(令和7年版)」(2025年6月)
- 企業会計基準委員会「移管指針第9号『金融商品会計に関する実務指針』」(2025年3月11日改正。その後の改正を含む)
- International Private Equity and Venture Capital Valuation Guidelines(2025年12月版)
- ILPA Principles 3.0(2019年)
免責事項
・本記事は、2026年10月時点で確認できる法令・公表資料にもとづく一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法律・税務・会計上の助言を構成するものではありません。個別案件への適用については、弁護士・公認会計士・税理士その他の専門家にご確認ください。
・掲載内容については正確性・最新性の確保に努めていますが、これらを保証するものではありません。
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よくある質問
この記事の監修者

ファンドキー株式会社 公認会計士
坂入 翔一朗
EY新日本監査法人にて日系・外資系の金融機関と投資ファンドの会計監査に従事。日本基準・US-GAAP・ファンドの会計実務を身につけた後、株式会社PrivateBANKへ参画。VCファンドの設立・ファンドレイズ・投資実行・監査対応まで、フロントからバックオフィスを経験。



